
野菜や果物の残留農薬が心配...
野菜や果物を食べる際の残留農薬は、多くの人々にとって心配の種かと思います。
それらの食材の残留農薬に関しては、茹でたり炒めたりなど調理の過程で農薬がある程度除去できることはいくつかの研究で示されています。(参照1, 2)
しかし、生で食べることの多いフルーツやサラダとして楽しむ野菜については、加熱調理による農薬低減ができないため残留農薬への懸念は消えないままです。
私たちの健康を守るためにも、家庭で簡単にできる農薬除去の方法を身につけることは非常に重要です。
ということで今回は、加熱調理をしない野菜や果物の安全な消費方法に焦点を当て、農薬を効果的に低減させるテクニックをご紹介します。
今回紹介するテクニックを活用すれば、どのような野菜や果物もより安全に楽しんでいただけるようになると思います。
残留農薬を気にするべき理由

改めて、残留農薬を気にするべき理由について軽く見ておきましょう。
1番大きな理由としては、残留農薬を持続的に摂取することで我々の健康への悪影響が懸念されている点です。
様々な研究によって持続的な農薬への暴露(食品からの摂取)による神経変性疾患、内分泌かく乱物質、生殖障害などの様々な疾患のリスクが増大することが指摘されています。(参照)

気持ち的にも虫を殺したりする成分を摂るのはなんか気持ち悪いですけどね。
健康メリットを打ち消す可能性も...
残留農薬の健康への害はすでにお分かりの通りですが、中でも厄介なのは野菜や果物から得られる健康メリット(心疾患リスクや全死亡率の低下など)を打ち消してしまう可能性があることです。
実際、2019年の研究では残留農薬の多少による心疾患リスクの低下が調べられており、結果として
- 残留農薬が低い野菜や果物を食べている場合は、それらの摂取量が多いほど心疾患リスクが低下
- 残留農薬が多い野菜や果物を食べている場合は、それらの摂取量が多くても心疾患リスクは変わらず
ということが示されています。

せっかく野菜や果物を多く摂取して健康的な食生活を意識していても、残留農薬が多いとその恩恵を受けられないのは辛いですね。
こういったことから、農薬による健康への悪影響を防ぐのはもちろん、野菜や果物の恩恵をしっかりと享受するためにも残留農薬の対策はしておいて損はないでしょう。
野菜や果物から農薬を落とす方法5選

野菜や果物から農薬を落とす方法としては、主に以下の5つがあります。
農薬を除去する方法5つ
- 皮を剥く
- 水またはお湯でしっかりと洗う
- 重曹で洗う
- 市販の野菜洗浄液を使う
- 塩水または酢水に浸ける
それぞれ解説していきます。
残留農薬を除去する方法①:皮を剥く
残留農薬を除去する一番簡単で手堅い方法は、皮を剥くことです。
農薬の多くは野菜や果物の表面についているものが多いため、外の皮を剥くことで大抵は除去できます。
実際、いくつかの方法を比べた研究でも、皮を剥く皮を剥くのが一番効果的とされていたりします。(参照)

最新の残留農薬ランキングでも皮を剥いて食べる食品が上位群に多くランクインしていたのも、そういったことがあるのかもしれません。
ただし、皮を剥くと栄養素も失われる
皮を剥くことで農薬対策はできますが、皮と一緒に栄養素が大きく失われてしまうこともあるので注意が必要です。

こういったこともあるので個人的には皮を剥くのを激推しはできません...
実際、リンゴを食べる健康効果は皮が大きく関わっている可能性が示唆されていたりしますしね。
皮が無いものには使えない
また、当たり前ですが皮を剥く方法は皮がついていない野菜や果物には使えません。
例えばほうれん草やブロッコリーなど剥く皮が無いものは、そもそも皮の剥きようが無いため、この方法は使えないのも1つデメリットでしょう。
農薬を除去する方法②:水またはお湯でしっかりと洗う
水またはお湯でしっかりと洗うことでも、農薬対策ができます。
これも基本的な方法ですが、しっかりと洗うことである程度の農薬や雑菌は落とせます。

皮の有無に関係なく行えるので、幅広い食品に適用できるのはメリットの1つでしょう。
洗う際のポイント
水で洗う場合のポイントとして以下を取り入れるとより効果的に農薬の除去をできます。
「水で洗うだけで本当に大丈夫 ?」という心配もあるかと思います。
が、異なる手法における葉物野菜の農薬除去率を調べた結果、流水で洗った場合が一番農薬を低減できたという研究結果もあるので、農薬除去効果は信じて良いでしょう。
農薬を除去する方法③:重曹で洗う
続いての農薬除去の方法は、少し意外かもしれませんが、重曹を混ぜた水で洗う方法です。
実はこの方法でかなり効果的に残留農薬を除去できるのです。
内部に浸透した農薬も除去
2017年の研究では、水道水、塩素を混ぜた水、重曹を混ぜた水の3つでそれぞれの農薬除去効果が比較されました。
その結果、農薬除去効果が一番高かったのは、重曹の入った水であったという結果が出ています。
具体的には、重曹を1%混ぜた水で12分リンゴを洗った場合、
- 表面の農薬(ホスメット)が95%減少
- 内部に浸透する殺虫剤(チアベンタゾール)も80%ほど減少
したようです。

まぁ12分も洗うのはしんどいかと思いますが、数分でも効果はかなりあるようなので試してみると良いでしょう。
農薬を除去する方法④:市販の野菜洗浄液を使う
4つ目の残留農薬を除去する方法は、市販の野菜洗浄剤を用いる方法です。
野菜洗浄剤の有名どころだと、ベジセーフやホタテの力くんなどがあります。
これらを用いることで、一定の残留農薬除去は期待できるようです。
実際、ベジセーフと水道水で落とせた農薬を比較する実験結果を見てみると、確かに水で洗う場合よりも多くの農薬を除去できているようでした。
どれくらい水道水でガッツリ洗われたのか、成分は水とカリウムだけでそんなに効果あるのか、など少々謎は残りますが、効果があるものも中にはあるのでしょう。
値段が高めなのがネック
野菜洗浄剤系の一番のネックは価格です。
ベジセーフは1本(400ml)で1,500円もしますし、他のものもそこそこ良い値段します。
水洗いよりも効果的に農薬を落とせる可能性はあるようですが、この値段を支払う対価がしっかり得られるかは微妙なところです。

個人的には、野菜洗浄剤よりも重曹の水で十分ではと思ったりもします。
農薬を除去する方法⑤:塩水や酢水に浸ける
残留農薬を除去する5つ目の方法は、塩水または酢水につけることです。
これらの方法によっても、かなり農薬が低減できる場合もあるみたいです。
例えば、2006年の研究では、クロルピリホスやクロロタロニルといった一般的な農薬4種類が異なる手法でどれくらい除去されるか調べられていました。
クロルピリホストとは有機リン系の殺虫剤で、クロロタロニルとは有機塩素系の非浸透性の殺菌剤のことです。
結果としては、10%の塩水に20分間浸けた場合は65~74%、10%の酢水に20分間浸けた場合も65~79%ほどそれらの農薬が除去されたようです。
この研究結果によると、若干酢水の方が除去率は高いようですが、食材へのニオイ移りも怖いので個人的には塩水の方が良いかなと思います。
ベストな農薬除去方法は?

上記で農薬の除去方法を5つ紹介しましたが、一体どれがベストなのか疑問もあるかと思います。
結論としては、これだけやってれば全て解決!という方法はなく、手法を組み合わせるほど農薬除去効果を得られるため、複数の方法を取り入れるのがおすすめです。
なので、重曹に数分浸けた後にしっかりと流水で洗ったり、塩水に浸けた後に皮を剥いたりなど、自分でいくつか組み合わせて洗うようにしてみてください。
個人的には、重曹か塩水につけた後にガッツリと流水で洗ってればほとんど心配ないかなと思っています。

どれだけやっても100%除去はできないので、おおむね除去できていれば良いかなという感じです。
ぜひ、皆さんも手間をかけすぎないようにしつつ、良い組み合わせを探してみてください。
食材ごとの洗い方を知りたいなら

ここまで加熱調理を用いずに、野菜や果物の残留農薬を提言する方法をご紹介してきました。
これらは基本的にはどの食材にも使えますが、実は手法によっては食材との相性によって推奨・非推奨になっているものもあるようです。
例えば、先ほど塩水で多くの農薬が除去できるとお伝えしましたが、イチゴにそれを適用すると逆に農薬を中に浸透させてしまう可能性もあるためNGとなっていたりします。
そういった食材ごとの最適な洗浄方法や避けるべき洗浄方法を知りたい方は、以下の本がおすすめです。

ただ、個人的には食材によって洗い方を分けるのが面倒なので、NGではない限り固定で重曹と流水で洗っていこうかなと思います。
農薬を除去して野菜と果物を安全に楽しもう:まとめ
まとめ
- 農薬を落とすには様々な方法がある
- 皮を剥くのが一番効果的だが栄養素も一緒に落ちるのが懸念点
- 重曹水や塩水、酢水でも効果的に農薬除去ができる
- 市販の野菜洗浄液は効果はあるかもだが値段がするので微妙
- いくつかの手法を組み合わせるとより効果的に農薬除去ができる
- 食材によってはNGな手法もあるので注意する
今回は、野菜や果物についた残留農薬を低減する方法について解説しました。
以前の残留農薬ランキングでも紹介しましたが、食材によってはかなり残留農薬があるものもあるので、そういったものには農薬除去対策が必須です。
今回紹介した方法をぜひ取り入れて、野菜と果物の健康効果を農薬によって阻害させられないように対策をしてみてください。