現在、過体重(BMI25以上)や肥満(BMI30以上)が世界中で蔓延しており、深刻な問題となっています。
実際、「2023年世界の食料不安の現状」(SOFI)報告書によると、世界では飢餓で苦しむ人は約7.4億人である一方で、過体重や肥満の人は20億人と言われています。(参照1, 2)
過体重や肥満の原因は様々ですが、砂糖入り飲料の過剰摂取もそのうちの1つとされています。
また、肥満はさまざまな病気のリスク要因になるため、この問題を解決することが世界の公衆衛生での大きな課題となっています。(参照)
今回は、その解決策の一つとして実施されている砂糖や砂糖入り飲料への課税について見ていきたいと思います。
砂糖入り飲料に課税している国々

世界では砂糖入り飲料に課税を行なっている国が少なくとも85ヵ国あります。(参照)
砂糖入り飲料に課税を行なっている国をいくつか紹介すると、
やはり近年問題視されている砂糖入り飲料への課税をする国々が増えているようで、比較的最近導入を始めている国が多い印象ですね。
課税率は国によって異なりますが、日本円に換算すると1リットル数円〜数十円ほどで課税となっているようです。(参照)
日本は?
ちなみに、みなさんご存知の通り日本では現状砂糖入り飲料に対する課税は行われていません。
でも実は、1901年(明治34年)には砂糖は贅沢品と考えられており、砂糖への課税(砂糖消費税)がかけられていました。(参照)
しかし、1989年(平成1年)の消費税の導入によって廃止されたようです。
砂糖入り飲料への課税は有効なのか?

結論、砂糖入り飲料への課税によって、消費減少や肥満や健康上の問題予防効果があるかについてはわからないようです。
研究者いわく、
砂糖入り飲料への課税の効果に対する根拠が非常に少なく、その効果の確実性も非常に低かった
Cochrane
としています。
ちなみに、「効果の確実性」とは、様々な研究結果に基づいて導き出した推定値(これくらいの効果があるだろうという値)にどれくらい確信を持てるかということを表しています。
つまり、効果がある無しに関わらず、その推定にどれくらい自信があるかどうかになります。
今回の研究では、課税による消費量低下の効果検証を行なった研究が1つあり、その研究では一定の消費減効果が見られたようです。
ただ、1つの研究から結論を出すには上下へのブレがある(たまたま良い/悪い結果が出た)可能性が高くなるため、結論として、課税による消費量低下の効果の確実性は低くなっています。
また、肥満の予防やカロリー摂取量等他の効果との関係については、該当する研究がないため結論が出されていません。
まとめ
まとめ
- 砂糖入り飲料の消費は世界で増加しており、人々の健康に深刻な影響を与えている
- 砂糖入り飲料の消費を低下するために世界各国では、砂糖入り飲料に対する課税がされている
- ただし、砂糖入り飲料への課税が消費量低下や肥満予防などに効果的かどうかを検証した研究が少なく、有効性は確かめられていない
甘くて美味しいコーラなどの砂糖入り飲料はついつい飲み過ぎてしまう節があります。
ただ、こういった飲料の摂り過ぎによる健康への悪影響はほぼ確実であるため、できるだけ抑えていく必要があります。
今回効果を検証した砂糖入り飲料への課税には、直感的には消費減効果がありそうではあるものの、しっかりと効果検証した研究が少なくまだ有効性が確かめられていないようでした。
砂糖入り飲料への課税以外にも、インセンティブを与えたりラベル表示を変えたりなど環境的な部分の変化によってそれらの消費量の減少を促す試みも行われているみたいです。
関連記事 砂糖入り飲料の摂取低下のための環境的介入
それくらい重要な問題ということでしょうね。
なので、個人でもできるだけ対策をしていきたいものですね。