みなさん、コーラなど甘い飲み物はお好きですか?
甘くて美味しいジュースなどつい飲み過ぎてしまうこともあるかと思いますが、そういった砂糖入り飲料の摂取量は世界で見ても増加してきています。
世界での砂糖入り飲料の消費を調査した研究によると、地域差はあるものの世界全体として、1990年から2018年にかけて砂糖入り飲料の摂取が約16%増加したと示されています。(増加量が一番多かったサハラ以南のアフリカでは約82%の増加)
今回は、この増加傾向にある砂糖入り飲料の摂取を低下させるために、どういった環境的なアプローチ(介入)が効果的なのかについて見ていきたいと思います。
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なぜ砂糖入り飲料の摂取を減らす?

まずそもそも、なぜ砂糖入り飲料の摂取を減らす動きがあるのかについてですが、答えはシンプルです。
砂糖入り飲料(コーラなどの砂糖の多い飲み物)を大量に、そして頻繁に摂取することは、肥満や第二型糖尿病、心疾患や虫歯のリスク要因であることがわかっているからです。1
そういった砂糖入り飲料の摂取量を減らすための手段の1つとして「環境的な介入」が提唱されています。
環境的な介入とは?
環境的な介入とは、環境を変化させることで、人々の特定の行動を制限したり促したりすることです。
今回の文脈でいう環境は、近所にスーパーがあるのか、ファストフード店が多い地域か、といったような人々の身の回り(生活環境)のことを指します。
なぜ環境か?
一言で言えば、人の行動は環境の影響を強く受けるから、という点です。
人間の意志力に頼った取り組みは往々にして失敗もしくは難易度が高くなります。

ダイエットや禁煙に失敗する人が後をたたないのを見ると明白ですね。
なので、個人の意志力などに頼らず、人々の環境を変えることで、より効果的にそして多くの人々の行動を良い方向へ変化させることができるため、環境への介入が重要になってくるのです。
研究の内容

研究内容のざっくりとしたまとめは以下の通りです。
- 環境的介入と砂糖入り飲料の摂取量の関係、または健康への影響を調べた研究が対象
- 最終的には58件の論文が対象となり、合計で約118万人分のデータが調査
- 環境的介入の手段は大きく分けて、食品ラベル、公的機関における栄養基準、経済的ツール、食品供給への介入、小売業および飲食業への介入、セクター間での取り組み、家庭ベースでの介入の6つ
では、研究の結果を見ていきましょう。
研究の結果

今回の研究の結論として以下のように締めくくっています。
集団レベルでの砂糖入り飲料の摂取量低下への効果的で拡大可能な介入が存在していることを示唆する
つまり、データ的に見ても、多くの人に対して砂糖入り飲料の消費量を低下させるように促す効果のある介入があったみたいですね。
ただ、今回対象となった介入全てにおいて効果的だったわけではないようなので、簡単に以下でそれぞれ説明していきます。
全て解説すると長くなるため、効果的な可能性があると判定されたもののみに絞って以下で解説していきます。
信号機表示(食品ラベルの介入)
効果的な可能性があるとして判断された1つ目の介入は、信号機表示です。
対象となった2つの研究では、信号機表示によって
- 赤色ラベルが付いている飲料の販売量が50%前後低下
- 赤色ラベルが付いている飲料の全販売飲料に対する割合が25%低下した
とのことです。
つまり、信号機ラベルによる警告によって、消費者がその飲み物の購入を避けるようになったということです。
信号機表示とは
信号機ラベルとは以下の画像のように、カロリー、脂肪、飽和脂肪酸、砂糖、塩分を信号機のように赤、黄、緑の色で表されている食品ラベルです。


日本ではあまり見ないですが、海外だと結構この表示がされています。
色の役割としては、信号機と同じように、緑は安全(量が少ない)、黄色は注意(中程度の量)、赤は危険(量が多い)みたいな感じです。

確かに、砂糖の部分が赤色で表示されていると、なんか砂糖を摂りすぎになる感じが直感的に伝わりますし、避けたくなりそうですね。
砂糖入り飲料の価格上昇(経済的ツール)
効果的な可能性があるとして判断された2つ目の介入は、砂糖入り飲料の価格上昇です。
この介入は、シンプルに砂糖入り飲料の価格を上げることによって、経済的に入手しやすさを少し難しくすることで砂糖入り飲料の消費や販売を抑えようとする試みです。

価格を上げる手段として、砂糖入り飲料に対する課税もその1つですが、今回は含まれていません。(それ専門の別の研究がある)
対象となった3つの研究では、砂糖入り飲料の価格を上げることで
- 顧客あたりの砂糖入り飲料の販売量が9%低下
- 赤色ラベルのついた飲み物の販売量が28%低下
- 実験参加者あたりの砂糖入り飲料の販売量が27%低下
することが示されていました。
つまり、砂糖入り飲料の価格を上げることで、大体10~30%ほど砂糖入り飲料の販売量が低下するようです。

確かに、価格が上がると安いものを求めて別のものを選択するようになるのは自然ですし、直感的にも効果がありそうな介入が、しっかりとデータでも効果ありとなっていますね。
店頭での低カロリー飲料のプロモーション(小売業および飲食業への介入)
続いて、効果的な可能性があるとして判断された介入は、店頭での低カロリー飲料のプロモーション(販促)です。
これは、低カロリー(ゼロコーラみたいなの)をプロモーションすることで、消費者の目に留まりやすくし、砂糖入り飲料よりもそちらを選ぶように促すという介入になります。
対象となった研究によると、低カロリー飲料のプロモーションによって
- 通路における砂糖入り飲料の販売量が1日あたり11リットル低下
- チェックアウトクーラーでの砂糖入り飲料の販売が1日あたり2ユニット低下
したとのことです。
積極的に低カロリーを宣伝することで、消費者がそちらを選びやすくなり、すでに買う予定の低カロリーから砂糖入り飲料に乗り換えるみたいな人が減ったということでしょうかね。
チェックアウトクーラーとは
ちなみに、チェックアウトクーラーとはレジ横にある冷蔵庫のようなもので、消費者が待っている間についで買いを促すよう設置されているものです。
こんな感じのやつ。


日本でもレジ横のガム置き場や飲み物置き場などありますが、それと同じですね。
政府によるインセンティブプログラム(セクターを超えた取り組み)
4つ目の効果的な可能性があるとして判断された介入は、政府によるインセンティブプログラムです。
このインセンティブプログラムは、果物や野菜の購入した場合に金銭的な報酬を与え、砂糖入り飲料の購入を制限するといったプログラムです。
対象となった1つの研究では、インセンティブありとなしを比較した場合に、
- 60ドル vs 0ドルの場合、砂糖入り飲料からの砂糖の摂取量が1日あたり5g低下
- 60ドル vs 30ドルの場合は、砂糖入り飲料からの砂糖の摂取量が1日あたり1g低下
- 30ドル vs 0ドルの場合は、砂糖入り飲料からの砂糖の摂取量が1日あたり5g低下
という結果となっています。
また、他2つの研究でもインセンティブがある場合の方が砂糖入り飲料の消費や購入が減少することが示されています。

確かに、選択を変えるだけでお金がもらえるのであれば、そちらを選びやすくなりそうですね。
自分も30ドルとか60ドルもらえるのであれば、喜んでそっちの方を選びますね。笑
家庭での低カロリー飲料へのアクセス改善(家庭ベースでの介入)
最後、効果的な可能性があるとして判断された介入の5つ目は、家庭での低カロリー飲料へのアクセス改善です。
この介入では、お水などの低カロリー飲料を対象者に提供したりすることで、家庭内でそういったものへのアクセス(手の届きやすさや選びやすさ)を改善することで、砂糖入り飲料の消費を抑えようとする試みです。
対象となった6つの研究によると、家庭内での低カロリー飲料のアクセスを改善することで
- 砂糖入り飲料の摂取量が1日あたり413ml低下
- 飲み物由来のカロリーが1日あたり88kcal低下
という結果となっています。
低カロリー飲料のアクセスを改善することで、1日あたり413mlも低下するのは少し驚きですね。

ほぼペットボトル1本分、または缶だと1.5本分ぐらい1日の摂取が減るというのは、かなりダイエットにもなりそうですね。
介入によるマイナスな影響はあるか?

ここまでで砂糖飲料の摂取を減らすために効果的とされる介入について見てきて、特定の介入にはある程度の効果がありそうなことはわかりました。
ただ、一方で全てがプラスの面というわけではないようです。
場合によっては以下のようなマイナスな影響が出ることもあります。
確かに、先ほど紹介した中にも砂糖入り飲料の販売が数十%も低下した介入がありましたし、そういった場合は販売店側としては嬉しくないですし、そういったところから不満が出るのは納得ですね。
ただ、それら砂糖入り飲料の摂取が増えるにつれて健康へのデメリットも大きくなるため、消費者の健康維持とそれら製造・販売側とのバランスが大切になってくるという感じでしょうか。
また、双方の合意が取れて介入を図ったとしても、「低カロリー飲料」を選択したのに他のもので埋め合わせしてしまうこともあるようなので、消費者側での知識習得や習慣も大きな課題となりそうですね。
環境的な介入は有効だが多面的な対策が必要:まとめ
砂糖入り飲料の摂取は世界的に見ても、どんどんと増えていっており、それがもたらす健康被害は深刻なものとなっています。
今回紹介したいくつかの介入によって、消費者行動を変化させ砂糖入り飲料の摂取や購入が減る可能性があることはわかりましたが、利害関係者とのバランスや消費者自身の埋め合わせ行動など介入すれば全て解決というわけではなさそうです。
砂糖入り飲料が美味しいのはわかりますが、ほどほどに楽しむのが一番ですね。