「砂糖の摂りすぎは太る」
といったことを一度は聞いたことがあるかもしれません。
しかし本当に砂糖は肥満の原因なのでしょうか?
今回はそのあたりを少し掘り下げて考えていきたいと思います。
砂糖自体が肥満の原因ではない?
世間で言われるように、本当に砂糖が肥満の原因となっているのでしょうか?
これを調べるためには、摂取カロリーを同じにした状態で、砂糖の摂取を変えればわかります。
ということでを調べた2つの研究を見ていきます。
<研究1>
研究 (1)では15人の肥満女性を対象に、一日の摂取カロリーを同じにして、果糖の量のみをコントロールし8週間後の変化を比べています。
※果糖とはフルーツに自然に含まれる糖分で、果糖も砂糖も糖分構造はほとんど同じと言われています(3)。
その結果というと、
・果糖の摂取量が高かったグループと低かったグループの間でも体重の減少量に大きな違いは見られなかった(6.9 ± 2% vs. 6.6 ± 2%, p = 0.785)。
・コレステロール値の減少は果糖を多く摂取したグループの方が大きかった。
というものになっております。
<研究2>
研究(2)では40名ほどの肥満女性を対象に実験が行われました。被験者を2つのグループに分け、一日のカロリー摂取量を同じ(約1100kcal)にし、片方のグループにはこのうちの43%が砂糖、もう片方はそのうち4%が砂糖からのカロリー摂取にし6週間後の体重の変化を比べました。
ちなみに、どのくらい砂糖の摂取量が違うかというと、
・高摂取グループは165.8g
・低摂取グループは57.9g
となっており、約三倍近く差がついております。
そしてこの実験の結果はというと、
・2つのグループの間での体重の減少にほとんど違いはなかった。
・体脂肪の減少率も違いはなかった。
となっております。
これら研究1と2から言えることは、摂取カロリーが同じであれば砂糖の摂取量が違っても体重の変化はない。つまり、砂糖自体が肥満の原因になるのではない、ということになります。
実は「砂糖の摂り方」に問題がある?
ということで、カロリー摂取量が同じであれば砂糖が肥満を促進することはありませんが、実は「砂糖の摂り方」が問題になってきます。
というのも、ジュースや炭酸飲料から砂糖を摂取した場合は、肥満のレベルが上昇することがわかっているのです。
こういったことを主張する論文はたくさんありますが(4,5)、今回は2017年の論文を見ていきたいと思います。
この論文(6)は、系統的レビューといって多数の論文をもとに結論を導き出す論文であり、最も信憑性が高いといわれるものであります。
この論文では30件もの論文が考察され、計24万人のデータがもとになっており、
「コーラなどの加糖飲料の摂取と肥満の間には正の相関がみられており、大人子どもに関わらず肥満に影響する」
と結論が出されています。
各論文で相関幅が異なり、総合的な相関の数値は示されていませんが、加糖飲料の摂取量が増えるほど、肥満のリスクが高くなる傾向にあるとのことです。
加糖飲料からの砂糖摂取で肥満に?
というわけで、加糖飲料の摂取量と肥満のリスクの間に正の相関が見られたため、「砂糖を飲み物から摂ると肥満になる」と考えるかもしれません。
しかし実際は、「加糖飲料から砂糖を摂取した場合太りやすくなる」ということではなく、「甘い飲み物は飲みすぎてしいがちになる」ということが原因であると一般的に考えられています。
2000年に出た論文(7)では、固形の砂糖と液体の砂糖でどう体重やカロリー摂取量に影響するかを調べてくれています。
この論文では、2グループに分けて約450kcalをソーダで摂った場合とゼリービーンズで摂った場合の影響を調べた結果、
・ソーダから摂取した場合はその後のカロリー摂取量が大幅に増えた一方で、ゼリービーンズを摂取した場合はカロリー摂取量が減少していた
・ソーダから摂取した場合の方が体重の増加量と体脂肪率の上昇率がゼリービーンズに比べ高かった
となっております。
この結果から、砂糖を飲み物からとった場合は、満足感が低いためその後のカロリー摂取量が上昇し、総合的に摂取カロリーが増えるため肥満に繋がりやすくなる、ということになります。
ちなみにゼリービーンズは下の写真のやつです。
食品選びには要注意!
これまでに述べてきたことから、「砂糖とっても害がない」と思って、積極的にケーキやお菓子を食べることはお勧めしません。
先ほども少し述べましたが、果物も天然の糖分を含んでおり、糖分構造は砂糖とほとんど変わりません。
しかし、ケーキを食べても果物を食べても同じ糖質だということで、ケーキを選んでしまうのは要注意です。
というのも、果物は糖質以外にもビタミンなど人間に必要な栄養素をたくさん含んでいるのに対し、ケーキやお菓子などの食べ物は果物に比べ栄養価はとても低くなります。
したがって、同じ糖質を摂るにしても、それ以外に栄養素を豊富に含んでいるかどうかで食べ物を選ぶようにしましょう。
まとめ
さて、今回は「砂糖が肥満の原因なのかどうか」ということについて考えてきました。
繰り返すと、
・砂糖自体が肥満の原因ではない
・飲み物から砂糖を摂取する場合は、摂りすぎないように注意
・同じ砂糖を摂取する場合も、食品選びには注意が必要
ということでした。
砂糖自体が悪者ではなく、それをどう摂取するか、何から得るかでその後の影響が変わってきますので、これからもその辺りは注意していきたいですね。
最後まで読んでいただき有難うございました。
参考文献
1.Rodríguez, M.C., Parra, M.D., Marques-Lopes, I., De Morentin, B.E.M., González, A., Martínez, J.A., 2005. Effects of two energy-restricted diets containing different fruit amounts on body weight loss and macronutrient oxidation. Plant Foods Hum Nutr 60, 219–224. https://doi.org/10.1007/s11130-005-8622-2
2.Surwit, R.S., Feinglos, M.N., McCaskill, C.C., Clay, S.L., Babyak, M.A., Brownlow, B.S., Plaisted, C.S., Lin, P.H., 1997. Metabolic and behavioral effects of a high-sucrose diet during weight loss. Am. J. Clin. Nutr. 65, 908–915. https://doi.org/10.1093/ajcn/65.4.908
3.HUFFPOST, 2013. Is Sugar From Fruit Better For You Than White Sugar? [WWW Document]. HuffPost. URL https://www.huffpost.com/entry/fruit-sugar-versus-white-sugar_n_3497795 (accessed 9.30.19).
4.Ludwig, D.S., Peterson, K.E., Gortmaker, S.L., 2001. Relation between consumption of sugar-sweetened drinks and childhood obesity: a prospective, observational analysis. The Lancet 357, 505–508. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(00)04041-1
5.Malik, V.S., Schulze, M.B., Hu, F.B., 2006. Intake of sugar-sweetened beverages and weight gain: a systematic review. Am J Clin Nutr 84, 274–288. https://doi.org/10.1093/ajcn/84.2.274
6.Luger, M., Lafontan, M., Bes-Rastrollo, M., Winzer, E., Yumuk, V., Farpour-Lambert, N., 2017. Sugar-Sweetened Beverages and Weight Gain in Children and Adults: A Systematic Review from 2013 to 2015 and a Comparison with Previous Studies. OFA 10, 674–693. https://doi.org/10.1159/000484566
7.DiMeglio, D.P., Mattes, R.D., 2000. Liquid versus solid carbohydrate: effects on food intake and body weight. Int. J. Obes. Relat. Metab. Disord. 24, 794–800. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10878689