突然ですが質問です。
みなさんは、お肉が好きですか?
「お肉大好き!」という方も多いのではないかと思います。
でも、実は、お肉には様々な問題が絡んでいることはご存知でしょうか?


ということで今回は、「お肉好きに知っておいてほしいこと」として、お肉の消費に関する様々な問題について解説していきたいと思います。
もしあなたが肉食獣のようにお肉を毎日、または毎食口にしているのであるならば知っておいたほうが良いことですので、ぜひ最後までご覧ください。
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お肉好きに知っておいてほしいこと①:栄養と健康
まず、お肉好きの方に知っておいてほしいことは、お肉を食べることによる健康への影響です。
正直、ここがみなさんも一番気になるポイントかと思います。
私たち人間が日々の生活で多く多く必要とする栄養素は以下の3つです。
- 炭水化物
- 脂肪
- タンパク質
これら3つ中で、タンパク質のうち「必須アミノ酸」と呼ばれるものは、食べ物からでしか取り入れることができません。(皆さんも聞いたことがあるかと思います。)
このことから、必須アミノ酸を含め多くのタンパク質を含んでいるお肉は、良質なタンパク質を摂取するにはもってこいの食材とされています。
しかし、お肉はタンパク質が豊富だからと言っても、「お肉を食べすぎることは、体に害を及ぼす」ことが指摘されています。
お肉を食べるデメリット
最近では、多くの研究でお肉の摂取による健康への悪影響が指摘されています。
特に、赤身肉(牛肉や豚肉など)は飽和脂肪を多く含み、発がんリスク(特に大腸がん)を高めることが指摘されています(参照)。
発がんリスクの上昇以外にも、赤身肉の消費の増加と共に、
- 死亡率の上昇
- 心疾患のリスクが上昇
- 糖尿病のリスクが上昇
することも指摘されています(参照)。
ハムなどの加工肉は特に注意
また、ソーセージやハムなどの加工されたお肉を50g食べるごとに、大腸がんのリスクが18%も上昇することをWHO(世界保健機構)が指摘しています。
さらに、お肉を食べる量と健康への影響を調べた研究では、肉を多く食べている人の方が大腸がんの発生リスクが高いことが発見されています。
ちなみに、ソーセージやハムなどの加工肉はWHOによって「発がん性のあるモノ:クラスⅠ」に分類されています。 このクラスⅠには「たばこ」や「アスベスト」なども分類されており、発がんとの関連性は確実なものであるとされています。
体重の増加にも関与している?
また病気のリスク以外にも、お肉の消費と体重の増加の間にも相関がみられたりしています。
例えば、約40万人のヨーロッパ人の大人を対象にした研究では、カロリー摂取量が同じであるにもかかわらず、お肉の消費と体重の増加が相関していることが指摘されています。
(中でも特に相関が強かったのは、ソーセージやハムなどの加工肉だったそうです。)
以上のように、お肉を食べることによる健康への影響が懸念されています。
ただ、これらは「肉を食べるな」ということではなく「適度に食べましょう」ということです。(ただし、加工肉はできるだけ控える。)
というのも、お肉もデメリットばかりではないからです。
お肉を食べるメリット
お肉を食べるメリットの代表的なものは、以下の3つです。
お肉を食べるデメリットに比べて少ない気はしますが、お肉のメリットはこんなところかと思います。
お肉と健康のまとめ
少し長くなったのでまとめておきます。
- お肉の摂取によって病気のリスクが上がることが懸念されている
- タンパク質などの大切な栄養素の補給源としてはとても良い
このことを踏まえ、お肉は食べすぎないようにするのが良いかなと思います。
ただ、どれくらいが適切な量なのかはまだ解明されていませんので、その辺は個人の判断でやっていくしかなさそうです。
ホルモン剤がバンバン入ったお肉もある
上記に加え、もう一つお伝えしておきたいことがあります。
それは、お肉と健康に関する問題でよく取り上げられる牛や豚などに使われる「ホルモン剤」です。
ホルモン剤とは、動物の成長を促進するために使われる動物用医薬品で、日本では使用が認められていません。
ただし、アメリカやカナダ、オーストラリアではホルモン剤の利用が認められており、日本への輸入は禁止されていません。
したがって、これらの国から日本に輸入されたお肉は、ホルモン剤を使用した牛や豚、ニワトリなどのものである可能性があります。

ホルモン剤を使ったお肉の健康への影響は?
ホルモン剤入りのお肉の健康への影響はまだ未解明なところが多いです。
一応、国際基準によって利用できる量が決まっていますが、各国によって対応が異なっているからです。
EUでは、ホルモン剤を使ったお肉を食べることの安全性が不確かであるという理由から、ホルモン剤を利用したお肉の輸入を禁止しています。
一方、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が定める食品の国際標準規格『CODEX(コーデックス)』では、基準値内の摂取であれば、健康への問題はないとされています。

(この章の参照:農林水産省PDF)
お肉好きに知っておいてほしいこと②:環境問題
実は、お肉は環境問題とも密接に関わっています。
どのように関わっているかは後ほど解説しますが、主に以下のような事柄が懸念されています。
- 温室効果ガスの大量排出
- 食物資源の大量消費
- 水資源の大量消費
- 川や海の水質汚染
- 森林伐採・生物多様性の損失
それぞれ順番に解説していきます。
環境への影響①:温室効果ガスの大量排出
お肉を生産する家畜産業は、大量の温室効果ガスの排出しています。
温室効果ガスとは、「地球温暖化の原因とされている気体の総称」です。 例)二酸化炭素、メタンガスなど
FAO(国際連合食糧農業機構)のデータによると、家畜産業は世界で排出される温室効果ガスの18%も排出しています。

と、そう感じられるかもしれませんが、この数値は、飛行機や船などの輸送部門よりも高いのです。
温室効果の高いガスを大量排出
さらに、家畜産業は人の活動に起因して排出される
- 二酸化炭素の9%
- メタンガスの37%
- 亜酸化窒素の67%
を占めています。
あまり知られていませんが、メタンガスは二酸化炭素の23倍、亜酸化窒素は二酸化炭素の296倍もの地球温暖化を促進する力を秘めているとされています。
つまり、畜産業は地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出の大部分をになっていると言えます。
環境への影響②:食物資源の大量消費
次に問題視されているのは、家畜産業が大量に消費している穀物です。
実は、世界で生産される穀物の半分を家畜が消費しているとされています(参照)。

ある研究によると、1㎏の牛肉を生産するのに11㎏もの穀物を必要となります。
そして、これら家畜に与えられた穀物は我々人間が食べられるものです。
(家畜は穀物でなくても草っぱでも育ちます。)
つまり、これは世界で8億人ほどが苦しむ飢餓の問題と矛盾する点でもあります。
なぜなら、生産された穀物が家畜のエサにならなければ、飢餓に苦しむ人々に食物を提供できていたかもしれないから。
お肉を生産している裏側には、こういったことが隠れていたりするのです。
環境への影響③:水資源の大量消費
さらに、家畜産業は水資源も大量に消費しています。
ある試算では、人間が使用する水資源の10%を家畜産業が占めているとされています
なぜ家畜産業は大量の水を使っている理由は、家畜を育てるための穀物を育てるのに大量の水が必要になるからです。
たんぱく質1kg生産するのに必要な水の量
ある試算では、動物から得られるタンパク質を1㎏生産するには、穀物から得られるタンパク質を1㎏生産するのに必要な水の100倍必要とされています。
こう言われてもあまりピンとこないかと思うので、以下の例をご覧ください。(参照)
- 1㎏の牛肉を生産するのに10万Lもの水を使用(=バングラデシュ人1人の水の使用量55年分と同じ)
- 113ℊ(クォーターパウンダーバーガーに使用される)の牛肉を生産するのに1万Lの水を使用(バングラデシュ人1人の水の使用量約6年分と同じ)
つまり、私たちが某ハンバーガーチェーン店でクォーターパウンダーを食べた時には、その裏で1万Lもの水が使われているということです。
ちなみに、上記の牛肉を生産するために必要な水の量ですが、日本人1人当たりの1日の水の使用量(289リットル)だと、346日分(1㎏の牛肉)と39日分(クォーターパウンダー用の牛肉)の水と同等となっています。

この家畜産業の水の大量消費の問題は、2025年までに世界の2/3の人口が水不足に直面するとされていることを考えると、非常に重要な問題となります。(参照)
環境への影響④:川や海の水質汚染
家畜産業は穀物や水資源を大量に消費しているだけでなく、海や川などの水質も汚染してしまっています。
というのも、家畜産業から排出された廃棄物(フンや肥料など)が、処理されずに川に流れていき、そのまま海に放出されてしまっていることも多いからです。
家畜産業から川などに排出される廃棄物には、以下のようなものがあります。(参照)
- 家畜の排せつ物
- 家畜用の薬(抗生物質、ワクチン、成長促進剤など)
- 窒素やリン(家畜の肥料や排せつ物から)
- 殺虫剤
- 病原菌 など
こういったものが川や海に流れて出ていき、そこにいる魚などの生態系にもダメージを与えてしまっている場合も少なくありません。
また、抗生物質による水質の汚染が「抗生物質耐性を持つウイルス」の出現に寄与していることも指摘されています。
抗生物質耐性を持つウイルスは、感染症の治療の難化を招き、感染症の拡大や重症化などが引き起こされるため、非常に問題視されています。
このように、家畜産業の活動によって川や海の水質汚染を招き、環境破壊やウイルスの蔓延に寄与する可能性があります。
環境への影響⑤:森林伐採・生物多様性の損失
家畜産業は森林伐採や、それに伴う生物の多様性の損失の原因の1つとなっています。
その理由としては、家畜のための広大な土地を作るために森林伐採を行う必要があり、それによってそこにいる生物も一緒に奪い、生物の多様性を損失させてしまっていることが挙げられます。
実際、FAO(国際連合食糧農業機構)によると、世界の土地資源のうち家畜産業のために使われている土地が一番広大で、家畜のエサを作るための放牧地や耕作地は農業地全体の80%も占めているとされています。
生物の多様性はなぜ重要?
生物の多様性が重要な理由は、生態系のバランスです。
地球上の生物はそれぞれの生態の間で微妙にバランスを取り合いながら生きています。
そこで、もしある種が絶滅すると生態のバランスが崩れたり、時には生態系そのものがなくなってしまったりする可能性があります。
みなさんも「ハチがいなくなると、人類は4年しか生き延びられない」と耳にしたことはないでしょうか?
これはミツバチなどのハチは花の受粉に非常に重要な役割を果たしており、めぐりめぐって我々人間の生活も支えているからです。
このように、一見すると何の関係もないように見える生物の生存も、実は私たちの生活に大きく関係しています。
ここが生物の多様性の重要性であり、その損失を招いている家畜産業の問題点なのです。
以上のように、家畜産業は我々の食料や地球の資源を大量に消費し、地球温暖化や環境破壊に大きな貢献をしていることが近年問題視されています。
結局どうすればいいの?(私の考え)
さて、ここまでお肉を食べることによる体への影響や、お肉を生産することによる地球環境への影響をいろいろと述べてきました。
そこから導き出される私個人の結論は、「お肉を食べるのを辞める!!」ではなく、「節度を持って楽しめばいいのでは?」ということです。
そう考えるのには2つ理由があります。
- 完全に排除はハードルが高い
- 世の中のシステムの問題
それぞれ解説していきます。
理由①:完全に排除はハードルが高い
まず、節度をもって楽しめば良いとする1つ目の理由は、お肉を完全に排除するのはハードルが非常に高いということです。
お肉が大好きな方も多いかと思いますし、お肉は私たちの食文化に深く結びついています。
なので、今回お伝えしたお肉にまつわる問題を聞かされて「はい。今日からお肉を食べるのをやめます。」となるのは非常に難しいかと思います。
しかし、「週一日だけお肉を控える」など少しだけ意識してお肉を食べる量を減らすことであれば誰にでもできるかなと思うのです。
フレキシタリアンから始めましょう
そこで、おすすめしたいのがフレキシタリアンという食事スタイルです。
フレキシタリアンとは、一言で言うとお肉などの動物性の食品の消費を減らしている人のことを指します。
これは、私も現在実践しており、普段は野菜や穀類・豆類中心の生活をしています。そしてたまに外食に行った時は、お肉を食べたりしています。
こんな感じで、意識的にお肉を食べる量を減らして行けば充分なのではと個人的には考えています、
フレキシタリアンは健康的にもメリット盛りだくさんで世界中で人気を集めていますので、気になる方がぜひ一度試してみてください!
以下の記事でフレキシタリアンのメリットなどをまとめています。

理由②:世の中のシステムの問題
そして、私が「節度を持って楽しめばいいのでは?」と考えるもう一つの理由は、お肉にまつわる問題は詰まる所「世の中のシステムが問題なのかな」と考えるからです。
というのも、現在は食べたいものが食べたいときにいつでも手に入ってしまいます。
この状態は100年ほど前くらいには考えられなかったもので、これを可能にしたのは偉大な先人達の努力や発明によって可能になったわけであります。
しかし、この現代の状態は「大量生産・大量消費」に依存しています。
大量生産・大量消費が根本的な原因?
お肉に関する問題、特に環境への影響は大量生産・大量消費が原因なのかなと考えています。
つまり、畜産業自体が問題というよりも、大量に生産するために大量の地球資源が使われ、それによって様々な影響をもたらしているということ。
なので、この大量生産・大量消費を変えることができれば、今回お伝えしたお肉がもたらす環境への影響も随分とマシになると考えています。
ここが、世の中のシステムの問題としているポイントです。
当たり前のように食糧が手に入るようになったいま忘れがちになっていますが、もう一度食事ができるありがたみを感じ、節度ある消費をしていきたいものです。
こういったことからも、私はお肉の消費を減らすフレキシタリアンを実践しています。
日本人のお肉の消費は急増している
最後に、お肉の消費に関する日本での状況をお伝えしておきます。
実は日本では、お肉の消費が1960年から現在に至るまで増え続けています。
少し古いデータですが、農畜産業振興機構によると、1人当たりのお肉の年間消費量は以下のように増加しています。
- 鶏肉 12倍増加 1㎏ (1960) → 12㎏ (2013)
- 豚肉 12倍増加 1㎏ (1960) → 12㎏ (2013)
- 牛肉 6倍増加 1㎏ (1960) → 6㎏ (2013)
- 食肉全体 約10倍増加 3.5㎏(1960)→ 30kg(2013)
こんな感じで、この50年余りの間にお肉の消費が急増していることがわかります。
この現状と今回お伝えしたお肉にまつわる様々な問題を踏まえ、お肉の消費について今一度考え直してみるのが良いなと感じています。
これ知ってますか?お肉好きに知っておいてほしいこと2つ:まとめ
今回は「お肉好きに知っておいてほしいこと」として、お肉にまつわる問題をいくつかお伝えしました。
お伝えして問題は以下の通りです。
- お肉と健康のリスク(大腸がんのリスク上昇など)
- お肉のメリット(植物から得られない栄養素など)
- 大量のホルモン剤が使われている可能性
- 家畜産業の温室効果ガス排出
- 家畜産業の大量の水の消費
- 家畜産業の川や海の水質汚染
- 家畜産業の森林伐採・生物多様性の損失
少しネガティブなことが多くなってしまいましたが、私は決して皆さんに「お肉を食べるのを辞めろ!」と主張したいのではありません。
ただ、皆さんに普段何気なく食べている「お肉」について理解を深めてもらい、また、普段の何気ない食事について改めて考えるきっかけになればと思いから、これらの情報をお伝えしました。
今回お伝えした情報を踏まえ、「お肉を食べるのを辞める」、「お肉を食べるのを減らしてみる」、または「今まで通りにお肉をガツガツ食べる」を決めるのはみなさん次第であります。
私個人がとやかく言うつもりも、言える立場でもありません。
今回お伝えしたことを踏まえて、今まで以上にお肉に感謝ができるようになって、これからは今まで以上にお肉がおいしく感じられるかもしれません。笑
ただ、いづれにせよお肉を含め、食べ物を食べるのであれば、おいしく食べて、健康になり、そして、できるだけ無駄な廃棄などは減らしていきたいものですね。