「ヴィーガンは健康に悪い」
なんてイメージを皆さんはお持ちではないでしょうか?
実際、「お肉を食べないからタンパク質が不足する」といったことが巷ではよく言われていたりします。
しかし、本当にヴィーガンはタンパク質を含め、お肉を食べる人に比べて栄養素が不足するのでしょうか?
ということで、今回はヴィーガンが不足しがちとされる7つの栄養素をご紹介し、それらが不足しないための対策についても解説していきたいと思います。
今回お伝えする「ヴィーガンが不足しがちな栄養素」をしっかりと理解し、対策をすることで、そういったヴィーガンになる上での健康のリスクを最小限にすることができます。
また、ヴィーガンでない人も不足する可能性のある栄養素も含んでいるので、ヴィーガンに興味のない方もそれらの栄養素の役割や不足対策を理解し、役立てていただけるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
- オメガ3脂肪酸 - ナッツ類で補給
- ビタミンD - きのこ類と太陽の光で補給
- ビタミンB-12 - サプリで補給
- カルシウム - 豆乳・大豆で補給
- 亜鉛 - 豆類で補給
- 鉄分 - 濃い緑の野菜で補給
- ヨウ素 ー 海藻類で補給
タップできる目次
ヴィーガンが不足しがちな7つの栄養素
ヴィーガンになる上で最も注意すべき点は、ヴィーガンの食事によって不足しがちな栄養素をしっかりと理解することです。
ヴィーガン食は、以下の7つの栄養素が不足しがちになるとされています(23)。
- オメガ3脂肪酸
- ビタミンD
- ビタミンB-12
- カルシウム
- 亜鉛
- 鉄分
- ヨウ素
これらの栄養素は、ヴィーガンだから不足する面もありますが、ヴィーガンでない人も不足しがちであったりするので注意が必要です。
それでは、上記の7つの栄養素とその働き、そして対策についてそれぞれ見ていきたいと思います。
オメガ3脂肪酸
まず、ヴィーガンが不足しがちな栄養素として、「オメガ3脂肪酸」が挙げられます。
オメガ3脂肪酸は魚に多く含まれているのですが、ヴィーガンは魚を食べないため、この栄養素が不足しがちになってしまいます。
ひと昔前に「オメガ3脂肪酸」という言葉が流行り、頻繁に耳にした記憶がありますが、この栄養素はどういった働きをするのかご存知でしょうか?
オメガ3脂肪酸の働きと欠乏症
オメガ3脂肪酸は、私たちの心臓や細胞の働きに大きく関わっています。
特に、心臓への効果は非常に大きく、様々な研究によってオメガ3脂肪酸の摂取によって心臓病のリスクが下がることが主張されています(1)。
また、他にも、オメガ3脂肪酸の摂取による目や脳の健康維持に役立つことも確認されています(2)。
しかし、このオメガ3脂肪酸が欠乏すると、以下のような症状がもたらされます(3)。
- 肌荒れや乾燥肌
- 髪の乾燥や光沢の減少、ふけ
- 爪割れ
- 過剰な喉の渇き
- 睡眠障害
- 注意散漫
- 気分の浮き沈みが激しくなる
- 鬱や過剰な不安
肌荒れや髪の乾燥・光沢の損失などは女性にとっては天敵なのではないでしょうか?
それでは、これらの欠乏症にならないためにも、どのくらいオメガ3脂肪酸を摂ればよいのでしょうか?
一日の摂取量と対処法
一日にどの程度オメガ3脂肪酸を摂取すればよいのかというと、1~3gでいいんです。
なんだ、それだけでよいのかって感じですね。
「クルミ」や「えごま」などがオメガ3脂肪酸を豊富に含んでいるので、おすすめです。
また、オメガ3脂肪酸を含んだカプセルなんかも良いかもしれません。
(が、オメガ3脂肪酸を含んだカプセルによる心臓病リスクの軽減は見られなかったりもしていますので(5)やはり自然のモノからとる方がベターかもですね。)
ビタミンD
次にヴィーガンが不足しがちな栄養素として、ビタミンDが挙げられます。
でも、実はビタミンDはヴィーガン以外の人も不足しがちであり、世界で10億人ほどがビタミンD不足であると推測されています(6)。
ビタミンDの働きと欠乏症
ビタミンDは、他のビタミンとは違い、ホルモンのような働きをし、私たちの体の全ての細胞がビタミンDに対する受容体を持っているとされています。
このビタミンDが不足することにより以下のような症状が出るとされています(7)。
- 頻繁な病気や感染症への感染
- 疲労感が増加
- 骨の痛みや腰痛
- 骨粗鬆症
- 鬱
- 傷口の回復速度の低下
- 抜け毛
- 筋肉痛
骨の痛みや骨粗鬆症に関しては、カルシウム不足の影響ではないかとお思いかも知れませんが、ビタミンDはカルシウムの吸収に深くかかわっているため、ビタミンD不足により、それらが引き起こされると考えられています。
さらに、ビタミンD不足はがんのリスクを上げるという研究もあったりします(8)。
一日の摂取量
一日に摂る必要があるビタミンDの量は、10~20μg(マイクログラム)とされています(9)。
1μgが100万分の1ℊなので割と少なくてよい気がしますが、世界に10億人もビタミンD不足がいると考えると、意外と大変なのかもしれません。
対処法
ビタミンD不足の一番の対処法は「お日様にあたる」ことです。
というのも、私たちの体は日に当たることで、ビタミンDを体内で生成するようにできているからです。
しかし日焼けなどが気になるという方は、豆腐やキノコ類に多く含まれるので、それらを多く食べるようにするとよいでしょう(4)。
またビタミンDのサプリなどもあるので、日に当たるのもキノコ類も嫌いという方はサプリからの摂取でもよいかもしれません。
ビタミンB-12
続いてヴィーガンが不足しがちな栄養素はビタミンB-12です。
このビタミンB-12は、ヴィーガンが圧倒的に不足しがちな栄養素の1つです。
というのも、ビタミンB-12は植物類には含まれておらず、ヴィーガンが食べないお肉や卵、魚に多く含まれているからです(10)。
また、先ほどのビタミンDとは違い体で生成することはできないため、食べ物からの摂取するしかありません。
なので、ヴィーガンは必然的にビタミンB-12が不足してしまうのです。
ビタミンB-12の働きと欠乏症
ビタミンB-12は主に、神経細胞の働きの正常化や赤血球の形成、DNA合成などの働きがあります。
そして、ビタミンB-12不足により以下の症状が引き起こされるとされています(11)。
- 青白い肌、または黄色がかった肌
- 衰弱や疲労
- 感覚異常(針などによるって異常な痛みを感じるなど)
- 歩行困難(バランス感覚の低下など)
- 舌の炎症や口周りの腫瘍
- 息切れや目まい
- 視界のぼやけ
- 気分の変動(鬱など)
一日の摂取量と対処法
一日に必要とされるビタミンB12の量は、1.5μgとされています(12)。
先ほどのビタミンDよりも必要量は少ないですが、ヴィーガンが食べる果物、野菜、穀類には含まれていないので特に注意が必要です。
対処法としては、ヴィーガンはどうしても自然の食べ物からのビタミンB12の摂取が困難であるので、補強食と言われるような人工的にビタミンB12を足した食べ物を摂る、もしくはサプリで補うといったようなことしか現在は対処できません(4)。
https://geeky-foody.com/2019/12/07/pork-nutrition/
カルシウム
実はカルシウムもヴィーガンが不足しがちな栄養素の1つであります。
カルシウムの働きと欠乏症
カルシウムは骨にとって非常に重要な役割を果たすといったことは、皆さんもご存知ですよね。
そして、カルシウム不足は以下の症状を招きます(13)。
- 骨粗鬆症
- 骨減少症
- 低カルシウム血症
骨減少症とは、骨量が正常よりも少なくなり骨がもろくなってしまうことです。
骨粗鬆症はこれが重度化したもので、骨減少症は骨粗鬆症よりは軽度なものであります。
また、低カルシウム血症は血中のカルシウム濃度が低くなった状態で、精神錯乱や物忘れ、筋肉の痙攣や鬱などの様々な異常をきたす一因となります。
一日の摂取量
19~64歳までの大人は一日700㎎のカルシウムを摂ることが推奨されています(14)。
一方、18歳以下の成長期にある子供はもう少し多くカルシウムを摂ることが推奨されており、9~18歳で一日1300㎎、4~8歳で1000㎎となっています(15)。
といった感じで9~18歳の子どもは大人のほぼ倍ぐらいのカルシウムを摂ることが推奨されているんですね。
対処法
カルシウムは一般的に牛乳が主な栄養源という認識が強いですが、他にも様々な食べ物がカルシウムを多く含んでいます。
日本人になじみのあるものでいうと、以下のようなものが挙げられます。
- ブロッコリー
- ほうれん草
- 小松菜
- 大豆などの豆類
- アーモンド
私的には、牛乳の代わりに豆乳を飲んだり、豆腐をたくさん食べるイメージで良いかなと思います。
アレルギーの人を除いて、日本人で豆腐が嫌いな人はめったにいないと思うので。。。
豆腐おいしいですしね。
亜鉛
5つ目のヴィーガンが不足しがちな栄養素として、亜鉛があります。
亜鉛の働きと欠乏症
亜鉛は、私たちの体を感染症から守ったり、細胞を生成したりするのに必要な栄養素です。
また、怪我からの回復やDNAの形成に重要な役割を果たします(16)。
亜鉛が不足することにより、以下の症状が現れます。
- 抜け毛
- 注意力の低下
- 味覚や嗅覚の鈍り
- 免疫力の低下
- 食欲の低下
- 下痢
- 傷口の回復速度の低下
一日の摂取量
推奨される亜鉛の一日の摂取量は、男女で少し異なります。
男性で一日9.5㎎、女性で一日7㎎となります(17)。
男性の方がより多くの亜鉛を摂取しなければならないののが特徴です。
対処法
亜鉛を摂取するのに良い食品は以下のようなものがあります(18)。
- 豆類(ひよこ豆やレンティルなど)
- 豆腐
- クルミ
- カシューナッツ
- チアシード
- 全麦(全粒)のパン
- キヌア
亜鉛不足対策として身近なところでは、パンを選ぶ時も普通のパンではなく、全粒パンと呼ばれる小麦粉の粉を丸ごと挽いたパンを選んでみたり、豆腐を意識的に食べるのがいいかと思います。
鉄分
鉄分もヴィーガンが不足しがちな栄養素の1つです。
鉄分の働きと欠乏症
鉄分は、主に体中に酸素を運ぶ赤血球の形成に非常に重要な役割を果たします(19)。
したがって、鉄分不足によって赤血球が減少し体中に酸素が運ばれなくなり、貧血を発症します(20)。
貧血には様々な種類がありますが、鉄分不足による貧血が世界で最も主流な貧血の原因であります(21)。
また、鉄分不足による貧血によって、以下の症状も引き起こされます(22)。
- 疲れや衰弱
- 頭痛
- 目まい
- 息切れ
- 舌の膨張や痛み
- 不規則な心拍
一日の摂取量
推奨される一日の鉄分摂取量は性別や年齢で異なり、男性と50歳以上の女性で8.7㎎、19~50歳の女性で14.8㎎となっています(19)。
比較的若い女性は多くの鉄分の摂取を必要とするようです。
そして、この19~50歳の女性が鉄分を多く必要とすることが、ヴィーガンだけでなく、女性の間で貧血が多くみられる一つの原因であると考えられます。
対処法
鉄分を摂るのには以下の食べ物がおすすめです(19)。
- ほうれん草
- 豆類
- ナッツ類
- 全粒の穀類(玄米など)
- ドライフルーツ
また、鉄分の吸収はビタミンCによって促進されるので、鉄分を摂ると同時にビタミンCも摂るのがおすすめです(4)。
したがって、両方を多く含む濃い緑の野菜(特にほうれん草)が鉄分補給にはもってこいの食材となります。
ヨウ素(またはヨード)
最後に、ヴィーガンが不足しがちな栄養素の1つ、ヨウ素についてお伝えします。
このヨウ素は、個人的にあまりなじみのない栄養素でしたが、妊婦や幼少期には重要な栄養素となります(23)。
ヨウ素の働きと欠乏症
ヨウ素は、甲状腺が甲状腺ホルモンを分泌するのに用いられ、甲状腺ホルモンによって、傷ついた細胞の修復や健全な新陳代謝が保たれています(24)。
また、世界の約3分の1の人口がヨウ素不足の危険があるとされています(25)。
そして、ヨウ素不足以下の症状が引き起こされます(26)。
- 甲状腺腫(首元の腫れ)
- 予期せぬ体重増加
- 疲労感
- 抜け毛
- 乾燥肌
- 寒気や冷え性
- 心拍数の変化
- 学習能力や記憶力の低下
- 重度または不規則な月経
さらに上記以外にも、妊娠期や幼少期のヨウ素不足は取り返しのつかない知能発達不全を招く危険性があるので妊娠している女性や若い子供は特に注意が必要です(27)。
一日の摂取量と対処法
一日に摂取するべきヨウ素の量は0.14~0.15㎎とされています(26)(28)。
ですが、妊娠期や授乳期の女性はそれぞれ一日に0.22㎎と0.29㎎摂取することが推奨されています(26)。
推奨されるヨウ素の摂取量は比較的少なめな量ですが、ヨウ素を豊富に含む食べ物が限られているので、注意が必要となります(26)。
ヨウ素を摂取するには、海苔、ワカメ、昆布などの海藻類がおすすめです。
他にも、果物のプルーンやヨウ化された塩(ヨウ素を含む塩)などもありますが、海藻類には劣りますので、特に妊娠期などには海藻類を積極的に食べるのが良いのではないかと思います。
まとめ
さて、いかがだったでしょうか?
今回は、「ヴィーガンになる上での注意点」として、ヴィーガンが不足しがちな7つの栄養素とそれを摂るための食べ物をご紹介しました。
- オメガ3脂肪酸 - ナッツ類で補給
- ビタミンD - きのこ類と太陽の光で補給
- ビタミンB-12 - サプリで補給
- カルシウム - 豆乳・大豆で補給
- 亜鉛 - 豆類で補給
- 鉄分 - 濃い緑の野菜で補給
- ヨウ素 - 海藻類で補給
ヴィーガンは上記の7つの栄養素が不足しがちであり、これらが不足することによって健康への様々な影響があることもお伝えしました。
「あれ、タンパク質が含まれていない!」と思った方もおられるかもしれません。
たしかに、よく「ヴィーガンはタンパク質不足になりやすい」とか「ヴィーガンはタンパク質を摂取しづらい」といったようなことがささやかれますが、実際はヴィーガンであろうがなかろうが十分な量の食事をしていればタンパク質不足陥ることはほとんどありません(4)。
というのも、ほとんどすべての食べ物がタンパク質を含んでおり(4)、お肉などの動物由来の食べ物以外のモノ(豆腐やひよこ豆など)も豊富にタンパク質を含んでいるからです。
さらに、「オートファジー」といった人間の体に備わっている機能で体内でタンパク質を生成し、外部からのタンパク質摂取にプラスして、必要なタンパク質の量を補っています。
こういった理由により、今回はヴィーガンが不足しがちな栄養素としての「タンパク質」を除きました。
私個人の結論としては、栄養素の面から見ると「ヴィーガンは健康に悪い」というのはあまり信憑性がないように思われます。
というのも、今回紹介したヴィーガンが不足しがちな栄養素の中でビタミンB12が唯一ヴィーガンが自然のモノから摂取出来ない栄養素だからです。
それ以外の栄養素は工夫次第でいくらでも摂取できますし、ヴィーガンだから不足に陥るというだけでなく、お肉などの動物由来のものを食べる方々も不足する危険性が十分にあります。
なので、今回ご紹介した栄養素はヴィーガンでない方も注意するべき点であります。
まぁヴィーガンではなくとも、バランスの取れた食事を心がけ、長く健康に生きていきたいものですね。
最後までご覧いただきありがとうございました。
https://geeky-foody.com/2020/01/22/vegan-merits/
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