

でも、こんな裏話はご存知ですか? 実は、ハンバーガー1つ作るのに日本人の水の使用量の数十日分が必要なのです。


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「食の欧米化」が進み、ハンバーガーやポテトフライなど欧米的な食事が当たり前となっている現代。
昔に比べ日本人もお肉を多く食べるようになりましたが、お肉の裏に隠れている様々な問題はまだまだ知られていません。
そこで今回は、お肉にまつわる問題の一つである「水資源との関わり」、特に牛肉の生産との関係についてお伝えしていきます。
始めにお伝えしておきますが、これを伝えて皆さんにお肉を食べるのをやめろと言いたいのではありません。
普段何気なく口にしているものがどのように作られているのかを知っていただきたいという思いがあるだけです。

ハンバーガーを作るのに何日分の水が必要?
まず結論ですが、ハンバーガーを1つ作るのに、私たち日本人が生活で使う水の8日分以上が必要になります。※
※牛肉パティが113gのクォーターパウンダーに必要な水の量と1日の水の使用量を1人あたり214Lで計算しています。
なぜ「8日分以上」としたかというと、ベースにする数値によって変動し数十日分も必要になる場合があるからです。
では、具体的にハンバーガーを1つ作るのにどれくらいのお水が必要なのかをみていきます。
ハンバーガーを作るのに必要な水の量は?
ハンバーガーを作るのに必要な水の量のいくつかの試算を、まとめてみました。
以下は、ハンバーガー(パティ113g)の生産に必要な水の量です。
- 1,741リットル(USGS)
- 1,892リットル(National Geographic)
- 2,331~3785リットル(Wall Street Journal)
- 3,140リットル(国連環境計画)
- 11,340リットル(Talia Raphaely)
※()内はソースリンク
こんな感じで必要な水の量の試算はバラついていますが、ハンバーガーを生産するのに大量の水を必要としていることはわかります。
私たちは毎日どれくらいお水を使う?
それでは、私たち日本人がどれくらいのお水を毎日利用しているのかについてみていきます。
こちらも試算によって様々ですが、東京都水道局の試算によると、ひとり1日あたり平均で214リットルを使用しているようです。
意外と多いと感じられたかもしれませんが、一般家庭での一人当たりの使用量だとこのくらいになるようです。
ちなみに、214リットルの内訳は以下の感じ。

出典:東京水道局HPより引用
計算してみた
では、ハンバーガーを作るのに何日分の水が必要なのかを計算してみます。
単純に、ハンバーガーを1つ作るのに必要な水の量を1日の水の使用量で割ってみました。
ハンバーガー1個分の水の量 | 必要な日数 |
1,714リットル | 8日 |
1,892リットル | 8.8日 |
2,331リットル | 10.8日 |
3,140リットル | 14.6日 |
3,785リットル | 17.6日 |
11,340リットル | 52.9日 |
どうでしょうか?
ハンバーガーを作るには、少なくても8日分の水が必要で、試算次第では52日分にまでなります。

なぜこれだけの水が必要なのか
でも、なぜハンバーガーを作るのにこれだけのお水が使われるのでしょうか。
その理由は、牛肉を生産するのに大量のお水が必要となるからです。
どれくらい必要になるかというと牛肉1kgを作るのに、大体15,000~20,000リットルぐらい必要になります。(参照1, 2)
この量が多いのかどうかを判断するために、他の食べ物を生産するのに必要な水の量と比べてみましょう。
牛肉と植物由来の食品の生産に必要な水の量の比較
The Atlanticに掲載されていた、牛肉と植物由来の食品に必要な水の量を比べたものは以下の通りです。
牛肉とアボカドの場合

出典:The Atlanticより引用(文字は筆者が編集)
牛肉1kgを生産するのに必要な水の量は、アボカド28.6個を生産するのに必要な水と同じなようです。
牛肉と小麦の場合

出典:The Atlanticより引用(文字は筆者が編集)
牛肉1kgを生産するのに必要な水の量は、小麦95kgを生産するのに必要な水と同じようです。

牛肉と豆腐の場合

出典:The Atlanticより引用(文字は筆者が編集)
牛肉1kgを生産するのに必要な水の量は、豆腐10kgを生産するのに必要な水と同じようです。

牛肉とサツマイモの場合

出典:The Atlanticより引用(文字は筆者が編集)
牛肉1kgを生産するのに必要な水の量は、サツマイモ52kgを生産するのに必要な水と同じようです。

なぜ牛肉の生産に水が大量に必要になるのか
上記の比較から、牛肉を生産する代わりに他の食べ物を作った場合には、より多くの食品を育てられるということがわかります。
でも、なぜ牛肉を生産するのにこれだけのお水が必要なのでしょうか。
その理由は一言でいうと、牛を育てるために大量のエサが必要になるからです。
どれくらいのエサが必要なのかというと、牛が生まれてから食肉になるまでの3年間に
- 1,300kgの穀物(小麦やオーツ麦など)
- 7,200kgの粗飼料(牧草や干し草など)
を食べます。(参照)
これらの牛のエサを育てるために、300万リットルもの水が必要になります。
つまり、牛を育てるために大量のエサが必要で、それらを育てるために多くの水が使われ、結果的に牛肉の生産に大量の水が使われているという事になるのです。
300万リットルもの水を使って育てた牛から得られるお肉の量は大体200kgと言われており、牛肉1kgを生産するために15,000リットルもの水が必要になるのです。
とはいえ鶏肉や豚肉の生産も大量のお水が必要
ここまで、牛肉を生産するために必要なお水の量に注目してきましたが、鶏肉や豚肉の生産にも同じように大量のお水を必要とします。

Los Angel Timesに掲載されていた試算は、以下の通り。
種類 | 1kg生産するのに必要な水の量 |
鶏肉 | 3,897L |
豚肉 | 4,796L |
鶏肉や豚肉は牛肉に比べると少ない水の量で生産できますが、それでも多くの水を必要とします。
ちなみに、大豆1kg生産するのに1,789リットル、小麦1kg生産するのに1,099リットル、リンゴ1個生産するのに68リットルが必要となっています。
こういった植物性の食品を育てる事に比べると、お肉を生産するためにはより多くの水が必要になることがわかります。
他の食べ物を育てるために必要な水の量が知りたい方は、こちらをご参照ください。
なぜ水を大量に使うことが問題になるのか
では、お肉の生産に大量のお水を使っていることがわかったところで、なぜそれが問題となるのかについて解説いきます。
お肉とお水の関係で主に問題になるのは、以下の3つと考えます。
- 肉の需要の増加とともに使われる水も増える
- 水資源が枯渇する
- 将来のたんぱく質不足に対応できない
それぞれ解説していきます。
問題①:肉の需要の増加とともに使われる水も増える
お肉の生産に大量の水を使うことは、極端な話をすると、需要がない場合は対して問題になりません。
例えば、一昔前までは牛肉などは一般的ではなく、食べられる人も限られていました。
その場合、家畜の飼育に大量の水が必要であろうと、需要が少ないので家畜の飼育に使われる水もずいぶん少なく済みます。
しかし、近年、日本を含め世界ではお肉の需要が急増しています。
つまり、お肉の生産増に伴って、さらに大量のお水が使われるようになったのです。
このことが、次の問題「水資源が枯渇する」につながっていきます。
問題②:水資源が枯渇する
大量のお肉を生産するために大量の水が使われることで、水資源を枯渇に導きます。
これは当たり前の話で、水も限りある資源です。
すでに現在では、世界で40億もの人々が1年間の1ヶ月以上深刻な水不足を経験しているとされます。(参照)
そしてこの数は2050年までに48~57億人まで増えるとされ、そのうちの75%がアジア圏の人々との予測もされています。(参照)
つまり、すでに深刻な水不足に直面している人が多いにも関わらず、肉類の生産で多くの飲み水が使われ、事態が深刻化すると予測されているのです。

問題③:将来のたんぱく質不足に対応できない
そして、3つ目の問題は、将来に予測されるたんぱく質不足の問題に対応できなくなるということです。
日本の人口は減少傾向ですが、世界の人口は爆発的に増加しています。
現在77億人いる世界の人口は、2050年までに約100億人にまで増えると予測されています。(参照)
人が増えれば、その分食糧も必要になります。
特にたんぱく質は体を作るために必要不可欠な栄養素で、十分に摂取しなくてはなりません。
そこで、たんぱく質の需要の多くをお肉で補おうとすると、お肉の生産の増加に伴って水の使用量も増え、水不足の問題を悪化させる可能性が高くなります。
したがって、将来のたんぱく質の需要を補うためにお肉を選択するのは、現状ではあまり良い選択肢と言えなさそうです。
実際、お肉などの動物由来のモノでたんぱく質1kgを生産するには、植物由来のものからたんぱく質を1kg生産するのに必要な水の100倍必要になるという試算もあります。(参照)
私たちにできること2つ
ここまで、お肉の生産には大量の水を必要とすること、そしてそれが現在ある水不足の問題を深刻化させる可能性が高いことをお伝えしてきました。
では、それらの問題を防ぐ、和らげるために私たちにできることがあるでしょうか?
あります。
私が考える私たちにできることは、以下の2つです。
- 食事のスタイルを変えてみる
- 培養肉の開発企業を応援する
それぞれ解説していきます。
私たちにできること①:食事スタイルを変えてみる
まず、私たちにできること1つ目は、普段の食事の仕方を変えてみることです。
これは今日からでもできるので非常におすすめです。
どのように変えるかというと、できるだけお肉や牛乳などの動物由来の食品を取らないようにすることです。
ヴィーガンやベジタリアンのように完全に排除する必要はありませんが、週1回やランチは動物性のものを避けてみるなどでOK。
こういった意識的に動物由来の食品の消費を抑えている人をフレキシタリアンといい、私も実践しています。

私たちにできること②:培養肉の開発企業を応援する
私たちにできること2つ目が、培養肉を開発している企業を応援することです。
培養肉とは、動物の細胞などから作られたお肉のことです。
培養肉の場合は、通常と比べ使用する水の量を82~96%ほど削減できるとされています。(参照)
他にも必要な土地や排出する温室効果ガスを90%ほど削減できるとされています。(参照)
つまり、この培養肉であれば今回取り上げた、お肉の生産に使われる水の量が大幅に減るため、環境への負担が現在よりも大きく低減することが予測されます。
したがって、こういったお肉を開発している企業を応援することで、お肉が大好きな人も将来我慢せずに食べられるようになるかもしれません。

「IntegriCulture」という日本企業も、培養肉の開発に取り組んでいるようです。
ハンバーガー1個に約10日分のお水が詰まってる!:まとめ
今回はお肉とお水の関係についてお伝えするためにハンバーガー1個を生産するのにどれくらいの水が使われているのかを解説してきました。
個人的にはフレキシタリアンを実践していて普段はあまりお肉を食べませんが、たまにハンバーガーとかを食べたくなります。
その時は、今回お伝えした内容が頭をよぎり、お水に感謝しながらハンバーガーを噛み締めています。笑
この事実を知る前よりも美味しく感じるようになった気が。。。
何はともあれ、日々の私たちの食事が成り立っている上では様々なことが起きているということをもっと知っていきたいですし、皆さんにもお伝えしていきたいと思います。
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