
「お酒は百薬の長」やで!
私と同じように、そう考える人も多いのではないでしょうか?
しかし、最新の研究によると、たとえ少量であっても飲酒はがんのリスクを高める可能性があることがわかってきました。
特に日本人は遺伝的にお酒に弱い人が多く、欧米人に比べて飲酒による健康への影響を受けやすいことが指摘されています。
今回は、日本で行われた大規模な調査をもとに、飲酒とがんリスクの関係についてわかりやすく解説します。飲酒が健康に与える影響を正しく理解し、健康的な生活を送るためのヒントを一緒に探っていきましょう。
▼YouTube動画での簡単解説▼
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【研究方法】日本人を対象とした大規模ながん研究

この研究は、日本全国の33の総合病院が参加した「日本組織労働安全衛生機構」が管理する入院患者臨床職業データベース(ICOD-R)を用いて行われました。
このデータベースには、患者の基本的な社会人口統計学的特性、病理学的情報、臨床歴、現在および過去の疾患の診断、職業歴(現在の仕事と直近の3つの仕事とその期間)、喫煙およびアルコールの習慣(状態、1日の量、期間)など、医師によって確認された医療カルテ情報が含まれています。
以下で研究の対象となった参加者やアルコール摂取量の算出方法などについて解説していきます。
研究の対象者
この研究では、2005年から2016年の間に病院に入院した20歳以上の126,464人(がん患者63,232人とその対照群63,232人)が対象となりました。
それぞれの特徴や選出方法は以下の通りです。

がん患者さんと同じような背景を持つ人たちを、他の病気の患者さんから選んで比較したんですね。
そうや。
そうすることで、がん患者さんとそうでない人の違いを、より正確に調べられるんやな。
できるだけ、飲酒以外の条件を揃えることで、飲酒の影響をはっきりさせようというわけや。

生涯のアルコール摂取量の算出方法
各患者の生涯のアルコール摂取量(ドリンクイヤー)は、1日の平均標準化アルコール単位(ドリンク/日)と飲酒期間(年)を掛け合わせて算出されました。
1ドリンクには23gのエタノールが含まれ、これは日本酒180mL、ビール500mL、ワイン180mL、ウイスキー60mLに相当します。
飲酒期間は、飲酒を開始した年齢から飲酒をやめた年齢まで、または飲酒をやめていない場合は入院時の年齢までの年数で計算されました。
つまり、20歳から平均して毎日ビール500mL飲んでいる人で、研究時で60歳だった人は...

えーっと、1日1ドリンクで、飲酒期間が60歳 - 20歳 = 40年だから… 1ドリンク/日 × 40年 = 40ドリンクイヤーってこと?
正解や!
その人は生涯で40ドリンクイヤー分のアルコールを摂取したことになるな。
このドリンクイヤーっていう単位で、それぞれの人の飲酒量を比較したんやで。

他の要因も考慮
性別、年齢、入院日、入院病院に加えて、喫煙歴(なし、過去、現在)、職業クラス(管理職・専門職の最長在職期間で定義)などの交絡因子を調整しました。
交絡因子とは、調べようとしている要因(今回はアルコールの摂取)とは別の要因で、結果(今回は癌の発症)に影響を与えるものを指します。
さらに、アルコール摂取と関連し、アルコール関連のがんリスクを説明する可能性のある生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症、肥満)も考慮されました。

交絡因子って、なんだか難しそうですね…。
簡単に言うと、結果に影響を与えそうな、お酒以外の要因のことやな。
例えば、喫煙はがんのリスクを高めることが知られている。
だから、お酒とがんの関係を調べるときは、喫煙の影響を取り除かないと、お酒だけの純粋な影響がわからへんやろ?


なるほど!
だから、喫煙歴とかも一緒に調べて、その影響を統計的に取り除いてるんですね!
そういうことや!
色々な要因を考慮することで、より正確に飲酒とがんの関係を明らかにしようとしてるんやな。
この研究、なかなか手の込んだことしとるわ。

【研究結果】飲酒とがんリスクの驚くべき関係

この研究結果の結論から言うと、生涯のアルコール摂取量がゼロの場合に、がんのリスクが最も低かったことが判明しました。
つまり、お酒を全く飲まないことが、がん予防の観点からは最も良いということになります。
以下で、具体的な数値も交えて結果をお伝えしていきます。
少量飲酒でもリスクは上昇
さらに、少量から中程度の飲酒であっても、がんのリスクは高まることが示されました。
具体的には、生涯のアルコール摂取量が10ドリンクイヤー(例:1日1杯の飲酒を10年間)増えるごとに、全体のがんリスクが5%上昇することが明らかになりました。

えっ!たった5%?
そんなに気にしなくてもいいんじゃない?
いやいや、この5%を甘く見たらあかんで。
日本人の平均寿命で考えると、生涯で2人に1人ががんになると言われとる。
その確率がさらに5%上がるというのは、かなり大きな影響やで。

さらに、全く飲酒しない人と比較して、1日あたり2ドリンク以下の飲酒でも、全ての発がんリスクがほぼ全ての飲酒期間で上昇することもわかっています。

少量のお酒でもがんリスクが上昇するってことやな。
特にリスクが高まるがんの種類
今回の研究では、全てのがんにおいてリスクが高まるわけではなく、飲酒との関連が強いがんの種類も明らかになりました。
特に、大腸がん、胃がん、乳がん、前立腺がん、食道がんのリスク上昇が顕著でした。
具体的な数値は以下の通りです。
がんのリスク上昇率
- 食道がん
10ドリンクイヤーごとにリスクが44%上昇(95%信頼区間: 33%-57%)。
さらに、全く飲酒しない人と比較して、20ドリンクイヤー未満の少量飲酒でもリスクが78%上昇(95%信頼区間: 9%-190%) - 大腸がん
10ドリンクイヤーごとにリスクが8%上昇 (95%信頼区間: 5%-11%)。 - 胃がん
10ドリンクイヤーごとにリスクが6%上昇 (95%信頼区間: 4%-9%)。 - 乳がん
10ドリンクイヤーごとにリスクが8%上昇 (95%信頼区間: 3%-13%)。 - 前立腺がん
10ドリンクイヤーごとにリスクが7%上昇 (95%信頼区間: 4%-9%)。

これらの癌は日本人にも多い癌ですよね?
そうやな。
特に大腸がんや胃がん、乳がんは日本人の罹患率が高いがんやから、飲酒との関連は無視できへんな。

性別や喫煙習慣に関わらず同様の結果
さらに、この結果は性別や喫煙習慣、職業などに関わらず、同様の傾向が見られました。
つまり、誰にとっても、飲酒はがんのリスクを高める可能性があるということです。
なぜ日本人はお酒でがんになりやすいのか?

この研究では、日本人がお酒でがんになりやすい理由についても考察しています。
その鍵となるのが、アセトアルデヒドという物質です。
アセトアルデヒドの有害性
アルコールは体内でアセトアルデヒドに分解されます。
このアセトアルデヒドは、細胞の増殖を刺激したり、DNAを傷つけたりする発がん性物質です。

アセトアルデヒドって、二日酔いの原因になる物質ですよね?
そうや。
二日酔いだけでなく、がんのリスクも高めるなんて、厄介な物質やな。

日本人に多いALDH2の低活性型
日本人は、アセトアルデヒドを分解する酵素であるALDH2の働きが弱い人が多いことが知られています。
そのため、欧米人に比べてアセトアルデヒドが体内に蓄積しやすく、がんのリスクが高まると考えられています。

お酒を飲むとすぐに顔が赤くなる人は、ALDH2の働きが弱いんでしたっけ?
その通りや。
日本人の約40%がALDH2の働きが弱いと言われている。
お酒に弱い人は、特に注意が必要やな。

これらの観点から、うまくアセトアルデヒドを分解できない日本人は、特にお酒によるがんのリスクが上がってしまうと考えられています。
日常生活でできる対策:飲酒習慣を見直そう

今回の研究で、少量であってもお酒を飲むことでがんのリスクが上がってしまう可能性が示されました。
この結果を踏まえて、日常生活でできる対策を考えてみました。

がんのリスクを減らすためにも、取り入れられるものからぜひ取り入れてみてや。
飲酒量を減らす
最も効果的な対策は、飲酒量を減らすことです。
全く飲まないのが理想ですが、付き合いなどがあり難しい場合は、まずは少しずつ減らしていくことを心がけましょう。

いきなり禁酒は難しいですよね…
そうやな。
例えば、毎日飲んでいる人は、週に数回は休肝日を設けるとか、1回の飲酒量を減らすとか、できることから始めるのがええな。

飲酒のペースをゆっくりにする
お酒を飲むときは、ゆっくりと時間をかけて飲むようにしましょう。
一気に飲むと、血中のアルコール濃度が急上昇し、体に負担がかかります。

お酒は味わって飲むことが大事や。食べ物と一緒に、ゆっくりと楽しむようにしよう。
バランスの良い食事を心がける
飲酒によって失われがちなビタミンやミネラルを補給することも大切です。
野菜や果物を積極的に摂取し、バランスの良い食事を心がけましょう。

お酒を飲むと、ビタミンB群が失われやすいんや。
緑黄色野菜や豚肉などを積極的に摂るようにしよう。
まとめ:お酒との上手な付き合い方を考えよう
今回の研究から、たとえ少量であっても飲酒はがんのリスクを高めることがわかりました。
日本人を対象としており、かなり信頼性の高い結果でもあります。
また、特に日本人は遺伝的にお酒に弱い人が多く、飲酒による健康への影響を受けやすいことが示唆されています。
この結果を受けて、お酒との上手な付き合い方を考えることが重要でしょう。

「お酒は百薬の長」ではなく、「お酒はほどほどに」ということを忘れずに、自分の健康と向き合っていこうな!